今は亡き有名建築家とのコラボレーションにより誕生したデンマークを拠点とするジョージ ジェンセンの最新コレクションには、建築的な立体感と女性のしなやかな力強さが漂います。

本記事は「ヴォーグ」オーストラリア版の20168月号に掲載されたものです。

建築家の故ザハ ハディドはかつてこう言っていました。「女性はいつも男性に劣ると思われていますが、女性にとって大事なことは自分に自信を持つことであり、同時にそれを理解してくれる人も必要です。」

ハディドは自信に満ち溢れた女性でした。先見性のあるデザインで数々の賞に輝き、世界中の女性建築家やクリエイターたちにとって先駆的な存在でした。3月に心臓発作により65歳で亡くなったハディドは、池で円を描くように泳ぐ2匹の鯉をイメージして曲線的に配された3つの建物で有名な北京のワンジン ソーホー(Wangjing Soho)をはじめ、印象的な建造物を多く手掛けました。

ハディドの生前最後のコラボレーションとなったジョージ ジェンセンのコレクションは、この建物からインスピレーションを得ました。立体的なシルバーリングとカフバングルのコレクションは、ハディドが亡くなる数日前、3月のバーゼルワールドで発表されました。その時、ハディドは「フォーブス」誌でこのように発言しています。「最初に着目したのはジョージ ジェンセンと自然との共存でした。自然の有機的な構造論理に内在する全体性、つまり環境づくりではそんな自然の一貫性に注目します。課題はそれを身につけられるアイテムで表現し、豊かな歴史と伝統を持つジョージ ジェンセンのデザインアプローチを新しく再解釈することでした。」

ジョージ ジェンセンCEO エヴァ-ロッタ シェーステット(Eva-Lotta Sjöstedt)

デンマークを代表するハイエンドなシルバーウエアブランドとモダンデザインを牽引する女性建築家との大胆なコラボレーションは、現在のブランドの美意識を見事に表現している、とジョージ ジェンセンの新CEOに就任したエヴァ-ロッタ シェーステットは語ります。

「ザハは壮大なスケールで物事を捉え、取り組む女性でした。同時に自分というものを明確に理解していました。強い人間は困難に立ち向かい、自らの力で限界を乗り越えていきます。私たちが望むのはこのようなタイプの人物とのコラボレーションです。」 とシェーステットは言います。

ハディドのフェミニスト的なイデオロギーは、シェーステットが率いるジョージ ジェンセンに抱く姿勢を映し出しています。その考えは4月にミラノのデザインウィークで行った発言にも表れています。そこでシェーステットは別の女性アーティストとのコラボレーションの発表イベントに主催者として参加していました。その女性アーティストとは、ジョージ ジェンセンのために波状のデザインが特徴のステンレススティール作品を生み出したスペイン出身の建築家兼デザイナー、パトリシア ウルキオラ(Patricia Urquiola)でした。

シェーステットは国際的なラグジュアリーブランドの数少ない女性CEOのひとりであることを誇りに思っています。シェーステットはアイコニックなヘニング コッペル(Henning Koppel) コレクションから、有名オーストラリア人デザイナー、ジョーダン アスキル(Jordan Askill)による蝶をイメージした昨年のコレクションまで、これまでジョージ ジェンセンが男性デザイナーたちと共に築いてきた力強いコラボレーションの歴史を高く評価すると同時に、デザインと企業構造そして女性の計り知れないパワーを製品作りに生かしたいと考えています。

「パワーを引き出すことが目標です。ジョージ ジェンセンの商品を身につけたり使用し、そしてアイテムをシェアしたり、思いを共有することで多くの女性に力を与えたいと考えています。」と彼女は語ります。

ハディドが描いたジョージ ジェンセンの世界

「たとえ、自分の主張や自分らしさというものが何かが分からなくても、ザハのような人物はインスピレーションを与えてくれます。これが私の目指すものです。それは壮大な目標であり、私たちが提供するのは商品ですが、それを通じて人々に力を与えたいと思っています。重要なのはデザインが発するメッセージです。好きなものを身につけることによって、どう楽しみ、そして人々にどんな印象を与えるかということが大切です。私が身につけたり自宅で楽しんだりするアイテムは、シンプルさとデザインが発するメッセージから成る一種の主張です。しかし、それだけではありません。私がジュエリーを身につけるのは、それが私らしさを引き出してくれるからです。ジュエリーを身につけているのが私であって、ジュエリーが主役ではありません。私は今の自分と、今後どうなりたいのかを明確に把握しています。だからこそ、私はこのブランドを愛しているのです。」

スウェーデン出身のシェーステットは3人の子供を持つ母親です。多くの北欧の女性同様、かなり現代的な家族構成で、数年間暮らした日本で彼女が要職に就く中、彼女の夫は彼女に代わって家事を担うことを決心しました。

家庭での自身の先進的なスタイルをジョージ ジェンセンの経営にも取り入れるかどうか尋ねられると、「自分には限界がないと思っています。やりたいことをしながら、良き母親であることも可能です」と彼女は語ります。「こうあるべき、というさまざまな概念が存在しますが、私はそんな風に確立された慣習やルールを破りたいのです。女性は成功しても、主張しても、権力を手にしても、着飾ってもいいのです。固体観念にとらわれずに生きることが大切なのです。」と語りました。